「本店」とは別の自治体に「事業所」を開設する場合には、『地方税』にご用心

会社を設立する際、本店とは別の場所に事業所を構えるケースは珍しくありません。ただし、本店と事業所が異なる自治体の場合、法人住民税の扱いが異なってしまうことがあるので、注意が必要です。

「事業所」とみなされる条件とは?

法人に関する税金は、次の3つに大別できます。
(1)法人税
(2)法人都道府県民税および法人事業税
(3)法人市町村民税

(1)の法人税は国税であり、日本の国は1つなので、本店所在地に申告すれば大丈夫です。一方、(2)(3)は地方税ですので、複数の事務所や事業所などがあれば、それぞれの地方団体に申告する必要があります(この場合の法人を「分割法人」といいます)。
 ここで重要なのは、事業所として実態を成しているか否かになります。税務上、「事業所等」としてみなされるか否かには、以下のポイントがあります。

  • 自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的および物的設備であり、設備に人が常駐して製造・事務等の業務に従事しているものを指します。人的設備または物的施設の一方のみ有する場合は事業所等に該当しません。
  • 従業員の宿泊、監視などの内部的、便宜的な目的のみに供されるものは、事業所等に含まれません。例えば、宿泊所、従業員の詰め所、番小屋、監視所などで、番人、管理用務員などのほかに事務員を配置しない場合があります。
  • 原則として、2~3ヵ月程度の一時的な事業用に供される現場事務所や仮小屋などは事業所等に該当しません。

 したがって、1つの事業所を本店とは別の場所に構えている場合でも、本店があくまでも登記上のみの扱いで、常駐の従業員がおらず、営業活動を行っていないのであれば、本店が事業所等に該当しません。よって、この場合は事業所が事業所が分割法人に該当しないので、法人税は本店所在地に、地方税は事業所の所在地に申告・納税すればいいことになります。

分割法人では「均等割」が加算される!

 分割法人の場合には、会社全体の地方税を関係する各地方団体に按分する必要があります。納付する「所得にかかる地方税」自体の合計金額は変わりません。しかし「均等割」という税金が事業所のある地方団体ごとに加算されます。

 では、「常駐する従業員がアルバイト1人程度ならば、人的設備に該当しないようにできるのでは」と考えてしまいがちですが、そうはいきません。たとえば、現地スタッフの応募広告等を出すなど、採用に関する証拠が残れば、地方団体のチェックが入り、均等割を求められることがあるでしょう。

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