令和6年分路線価
国税庁より7月1日に令和6年分の路線価が発表されました。
1.路線価とは
国税庁がある程度の基準として設けた公的な土地の価格です。路線(道路)に価格を付して、その道路に面している土地の1㎡あたりの価格を表示しています。
2.路線価の用途
相続税額・贈与税額を計算するうえでの土地等の評価額計算の基となる金額です。また公的機関からのものなので、信用性の高い価格として利用されています。(公示価格の80%程度となっています。)
3.その他の価額
【公示価格】
国土交通省が毎年3月に発表する標準地(全国約26000地点)の1㎡あたりの価格です。一般の土地取引に対しての指標となる価格です。
【実勢価格】
実際に取引された土地の価格です。この価格は需要、立地、周辺環境、当事者間の価格交渉などにより変動します。
【固定資産税評価額】
市町村が固定資産税を計算する際の基準となる金額です。公示価格の70%程度となっています。
4.路線価の令和6年分の動向
住宅地の対前年変動率は、全国平均2.3%上昇しています。29都道府県で上昇、2県で横ばい、16県で下落しました。上昇した29都道府県のうち、上昇率5%以上だったのは、北海道、宮城県、東京都、福岡県、沖縄県の5都市です。
都道府県庁所在地の対前年変動率は、再開発事業等の進展、インバウンドを含む人流の回復などをうけて、37都市で上昇しました。横ばいは9都市、下落は1都市です。37都市のうち最も上昇したのは、「千葉市中央区富士見2丁目千葉駅東口駅前広場」で14.9%上昇しました。
生前贈与と相続税
<民法における相続財産>
民法においては、相続人間の公平な遺産分割について、特別受益という考え方があり、相続財産に被相続人からの生前贈与の財産の価額を加えたものを相続財産とみなす。
<相続税法における相続財産>
相続税の課税対象となる財産は、相続開始時の被相続人の所有する財産に民法の特別受益の考えを取り入れて、次の財産も相続財産に加算する。
・生命保険金、退職手当金等のみなし財産。
・相続開始前3年以内に贈与を受けた財産(令和5年12月31日までの贈与)。
・相続時精算課税の適用を受けた財産。
1.相続開始前贈与財産の加算する年分の改正
【 改正前 】
相続開始前3年以内の贈与財産を課税価格に加算する。
【 改正後 】
相続開始前7年以内の贈与財産を課税価格に加算する。ただし、相続開始前3年超7年以内の贈与財産がある場合には、その合計額から100万円を控除した残額を加算する。
*令和6年1月1日以後の贈与財産にかかる相続について適用される。
2.相続時精算課税制度の改正
【 改正前 】
相続時精算課税制度の選択をした年分以後の特定贈与者からの贈与⇒金額に関係なく、すべて贈与税の申告が必要。(贈与税の基礎控除額以下の贈与であっても申告が必要)その金額が、相続時には相続時精算課税制度の適用を受けた財産として相続財産に加算される。
【 改正後 】
相続時精算課税制度の選択をした年分以後の特定贈与者からの贈与⇒贈与税の基礎控除110万円を控除した金額で贈与税の申告をする。相続時には基礎控除額控除後の金額を相続財産に加算する。
*特定贈与者からの贈与についての基礎控除額の控除は、暦年課税の基礎控除とは別枠で適用できる。
*実務的な観点から、少額な贈与は管理する必要性が低いため。
3.相続税計算方式改正の可能性
相続税額の現在の計算方式は、被相続人の財産の合計額から相続税総額を算出して、その相続税総額を各相続人が取得した財産の割合であん分してそれぞれの税額を算出する。
この方式だと、他の相続人が取得した財産の金額や生前に贈与を受けた財産の金額に、自分の相続税額が左右されてしまうため、財産を取得した者が取得した財産の価額を基に相続税額を算出する方式に改正される可能性がある。
法人の源泉徴収に関する実務
1.給与の支給に関する源泉徴収
①月額表を使用する場合 支払い形態が「月ごと」「半月ごと」「10日ごと」「数か月ごと」に支払うもの。扶養控除等申告書の提出がある場合は甲欄、ない場合は乙欄を適用。
②日額表を使用する場合 支払い形態が「毎日」「週ごと」「日割り」で支払うもの。日雇い賃金の支払いについては丙欄を適用。
③アルバイト等への給与の支給に関する源泉徴収 雇用期間が2ケ月以内で、日給または時間給を支給する場合、日額表の丙欄を適用して源泉徴収することができる。(日給9,300円未満であれば源泉徴収の必要はなし。)
④通勤費の取り扱い 通勤手当の非課税限度額は、その人の通勤手段や通勤距離の事情に照らし、最も経済的・合理的と認められる経路および方法のうち、1カ月15万円以下の金額。また、アルバイト等の勤務日数が1カ月に満たない人であっても非課税限度額を日割り計算する必要はない。 通勤のため交通機関を利用する人は、運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる経路および方法による乗車券の価額。(1カ月15万円を限度)
2.外国人労働者への給与の支給に関する源泉徴収
①外国人労働者が所得税法上の居住者の場合 居住者に該当する場合には、一般の従業員と同じ取り扱いとなる。
②外国人労働者が所得税法上の非居住者の場合 非居住者に該当する場合には、国内源泉所得として給与の場合一律20.42%の税率で源泉徴収をし、その者の日本での課税関係は終了する。
③租税条約の取り扱い 非居住者の学生などについては、租税条約により、免税あるいは一定額免税とされる場合がある。租税条約の内容はその相手国により異なるので、その学生がどこの国の居住者であるのか、その国が日本と租税条約を締結しているのか、その租税条約の内容はどのようなものか等の確認が必要となる。
④非居住者に対する通勤費の取り扱い 通勤手当の非課税の規定は、その者が居住者か非居住者かを問わないので、非課税限度額範囲内であれば課税されない。
路線価について
国税庁が7月3日に令和5年分の路線価を発表しました。
1.路線価とは
国税庁がある程度の基準として設けた公的な土地の価格で、路線(道路)に価格を付して、その道路に面している土地の1㎡あたりの価格を表示しています。
2.路線価の用途
相続税額・贈与税額を計算するうえでの土地等の評価額計算の基になる金額となります。また公的機関からのものなので、信用性の高い価格として利用されています。 *公示価格の80%程度となっています。
3.その他の価額
【公示価格】国土交通省が毎年3月に発表する標準地(全国約26000地点)の1㎡あたりの価格です。一般の土地取引に対しての指標となります。
【実勢価格】実際に取引された土地の価格です。この価格は需要、立地、周辺環境、当事者間の価格交渉などにより変動します。
【固定資産税評価額】市町村が固定資産税を計算する際の基準となる金額です。公示価格の70%程度となっています。
国際税務の取り扱いにかかる租税条約
1.課税の原則
<日本をはじめ多くの国々の課税の原則>
・自国の法人や個人(内国法人・居住者)
⇒ どこの国で生じたかにかかわらずすべての所得に対して課税。
・他国の法人や個人(外国法人・非居住者)
⇒ 自国内で生じた所得に対してのみ課税。
2.租税条約がなかった場合
アメリカ法人が日本で生じた所得については
アメリカでは ┉┉ すべての所得に対して課税するので課税。
日本では ┉┉ 日本で生じた所得なので課税する。
⇒ 同じ所得に対して国際間の二重課税が生じてしまう。
*二重課税が生じると、企業の海外進出の妨げになる。また、国際的な投資・経済活動の妨げとなる恐れがある。
3.租税条約による課税権の調整
二重課税を生じさせないためには、アメリカ法人の日本で生じた所得に日本で課税できないようにする。
日米租税条約によって、「日本での課税を免除する。」「日本で課税はするが低率の税率で課税する。」などの取り決めを行うことで調整する。
*租税条約は、居住地国(アメリカ)と所得源泉地国(日本)が異なる場合に所得源泉地国での課税範囲を制限するもの。
4.国際間の二重課税が生じた場合
居住地国における税法に従って、外国税額控除を行って、二重課税を排除する。
【アメリカに本店を有するA社が、日本の内国法人甲社から配当を受けた場合】
アメリカでは ┉┉ アメリカの国内法により、その配当に対して課税される。
日本では ┉┉ 日本の国内法により、課税される(税率20.42%)こととなるが、
日米租税条約の取り決めにより、配当に対しては税率5%で課税
(源泉徴収)する。
その後、アメリカにおいて日本で課税された税額を外国税額控除の規定に従って控除する。
5.租税条約の内容
租税条約は国と国との取り決めなので、全世界一律ではない。同じ取引であっても相手国が異なると課税関係が違うこととなる。
〈C国の法人がD国から配当を受け取った場合〉
C国⇔D国 の租税条約
『D国は、C国の法人が受け取る配当について、D国では税率10%まで課税する。』
・D国の国内法において、「外国法人が受け取る配当は免税」となっていたら
⇒ 租税条約により10%の課税がされることはない。 その国の国内法が優先する。
居住者と非居住者の源泉徴収と確定申告
所得税法では、居住者とは、日本国内に住所を有するか、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人で、非居住者とは、居住者以外の個人と規定している。(居住者の中でも、日本国籍を有さず、かつ過去10年以内に日本に住んでいた期間が5年以下の者は非永住者。) 居住者か非居住者かの判定をするときの住所とは、その人の生活の本拠地(1ヵ所のみ)をいう。居所とは、継続して住んでいる場所をいう。その居所が1年以上継続していれば住所を有していることと同じと判断される。 例:海外駐在の場合(日本を離れた日の翌日から非居住者となる。)
①居住者と非居住者の課税範囲
【居住者】所得の種類や所得の生じた場所を問わず、すべての所得。(非永住者は、国内源泉所得と国外源泉所得のうち国内で支払われたまたは国外から送金されたもの。) 【非居住者】国内源泉所得のみ。
②非居住者の国内源泉所得のみの課税
居住者はすべての所得に課税されるが、非居住者が課税されるのは国内源泉所得のみ。日本国内にある不動産から生じた所得は、国内源泉所得として課税される。
③非居住者の国内源泉所得にかかる源泉徴収の義務
非居住者が所有する日本国内にある不動産から生じた賃貸料収入は、国内源泉所得に該当し、対価の支払いの際に源泉徴収の対象となる。(20.42%の源泉徴収) 例:法人が日本国内にある不動産の賃借料を、その不動産所有者である非居住者に支払う場合。 例外:支払者が個人の場合で、その賃借物件が支払者自身または親族の居住の用に供している場合、支払者である個人は、源泉徴収不要。
④納税管理人の選定
非居住者である納税者やこれから非居住者になる場合などは、納税管理人を定めて税務署に届け出る義務がある。納税管理人は、申告書・申請書等の提出、納税、還付金の受領、税務署と納税者との連絡などを行う。税理士等の資格は必要なく、法人でも構わない。納税管理人の制度は、固定資産税や住民税等の地方税にもある。
インボイス制度 令和5年度改正
免税事業者がインボイス発行事業者になるかどうかの判断に影響が出ると考えられる4つの措置について
1.小規模事業者にかかる税額控除に関する経過措置(「2割特例」) これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の負担軽減措置。
〇免税事業者がインボイス発行事業者を選択した場合の負担軽減を図るため、納税額を売上税額の2割に軽減する緩和措置を3年間講ずる。 〇これにより業種にかかわらず、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が可能となることから、簡易課税に比しても事務負担を大幅に軽減することとなる。
【対象期間】令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間。 【対象者】インボイス発行事業者の登録をしなければ、課税事業者にならなかった者が対象。(基準期間における課税売上高が、1千万円を超えている場合は対象とならない。) 【適用の手続き】事前の届出は不要。確定申告書にその旨を付記するだけで、適用ができる。(2年間の継続適用義務などもなく、簡易課税制度を選択していても適用することができる。) 【簡易課税への移行措置】2割特例の適用をうけたインボイス発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税の適用届出書を提出した場合には、その提出した日の属する課税期間から簡易課税の適用が受けられる。(本来は簡易課税の適用を受ける課税期間の初日の前日までに届出書の提出が必要。)
2.一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(「少額特例」) 課税売上高1億円以下の事業者が行う1万円未満の取引について、帳簿のみの保存で仕入税額控除ができるようにされた措置。
〇基準期間における課税売上高が1億円以下である事業者については、インボイス制度施行から6年間、1万円未満の課税仕入について、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除を可能とする。 〇基準期間における課税売上高が1億円超であったとしても、前年または全事業年度開始の日以後6カ月の期間の課税売上高が5千万円以下である場合は、特例の対象となる。
3.少額な返還インボイスの交付義務免除 振込手数料相当額の値引き等にかかる事務負担の軽減として、返還インボイスの交付義務の免除措置。
〇決済の際に、買い手側で差し引かれた振込手数料相当額等を売上値引きとして処理する場合には、事務負担軽減の観点から少額な値引き等(1万円未満)については、返還インボイスの交付を不要とする。
4.登録制度の見直し案と手続きの柔軟化
〇課税期間の初日から登録事業者となる場合または登録事業者の取消しを求める場合は、その課税期間の初日から15日前までを申請期限とする。 〇令和5年10月1日以後に免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合は、登録希望日の15日前までを申請期限とする。
ダイレクト納付について
キャッシュレス納付のうちダイレクト納付は、e-Taxを利用して電子申告・徴収高計算書
データの送信または納付情報を登録した後に、あらかじめ届出をした預金口座からの振替
により、即時または指定した期日に納付することができる電子納税の手段です。
ダイレクト納付のメリット等は以下のとおりとなります。
・インターネットを利用できる環境があれば、利用可能です。
・預金口座のある銀行とのインターネットバンキングの契約がなくても利用可能です。
・e-Taxの利用者識別番号と暗証番号のみで納付手続きが可能です。
・電子証明書の添付やICカードリーダーなしで利用可能です。
・即時納付または納付日を指定して納付することができます。
・電子申告で申告書を送信した後に、税理士が納税者に代わって納付手続きをすることもできます。
・納付する際に複数の預金口座から選択することができます。
なお、利用する際には『e-Tax開始届出』や『ダイレクト納付利用届出』が必要となります。
法人税における令和4年度の主な税制改正
「成長と分配の好循環の実現」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」などを柱に行われた法人税の改正項目について。
1.中小企業における所得拡大促進税制の見直し及び延長 中小企業の雇用を守りつつ、賃上げや人材投資を促す観点から、所得拡大促進税制について、控除率の上乗せ要件が見直されるとともに、控除率が最大40%に引き上げられ、適用期限が1年延長されました。
2.人材確保促進税制の見直し 継続雇用者の給与総額を一定以上増加させた企業については、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大30%が控除されるように見直されました。
3.中小法人の交際費課税の特例措置の延長 中小法人の交際費課税の特例措置(定額控除限度額800万円まで損金算入可)および接待飲食費にかかる損金算入の特例の適用期限が2年延長されました。
4.少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直し 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度の適用対象資産から貸付(主な事業として行われるものをのぞく)の用に供する資産が除かれました。また中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限が2年延長されました。
資産の貸付に関連する法人税、消費税の改正
1.少額減価償却資産の特例制度の改正
ドローン・建設用足場・LED照明などを大量に取得してその資産を貸し付ける方法による法人税の節税を抑制することが目的。
①改正項目
・少額減価償却資産の取得価額の損金算入
・一括償却資産の損金算入
・中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
上記の特例は、貸付の用に供する資産については、適用しない。ただし、節税目的でない貸付の場合は適用できる。
【節税目的ではない貸付の例】
・子会社に資金が不足しているなどの理由により、親会社が資産(事務機器等)を購入してその資産を子会社に貸し付けるケース。
・元請け企業が下請け企業に資産(工具等)を貸し付けるケース。
・不動産賃貸業者が賃貸物件に付随して資産(家具等)を貸し付けるケース。
②令和4年4月1日以後取得する減価償却資産について適用
③法人税法上も毎期減価償却を行う資産であることから、償却資産税の対象資産となると考えられる。
2.居住用賃貸建物の取得等にかかる仕入税額控除の改正
①改正項目
消費税の税額計算において、事業者が国内で行う居住用賃貸建物(住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物を除く)の取得にかかる課税仕入れ等の税額については、仕入れ税額控除の対象としない。
住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物とは、例えばその全体が店舗である建物など、構造・設備等の状況により住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物が該当する。
②令和2年10月1日以後に行われる居住用建物取得について適用